『鬼性のものは、人の世の毒には染まらぬものよ』
それは、小さな娘を傍らに悠然とそう言った。
もちろんこの屋敷に二人きりということはなく、世話役の女たちがなにかれとなく居て。その顔ぶれはころころ変わった。
なんとなく、本当になんとなくだが。
気ままに、欲望のままに生きるには。世界は、羅刹にとって猥雑すぎたのかもしれない。なんというか、この鬼は神を嫌い人を嫌い、夜を愛し闇を愛し。醜く生きるものを、ことのほか憎んだ。
美しい夜を、愛した。
それは彼の中にのみある理想で、時折めまぐるしく変わる。血の宴だったり、静かな月夜だったり。
だから侍る女たちは、時折それに巻き込まれて死んだり。
とにかく、ういの知らぬ場所でずいぶんと賑やかだった。気が向けば半年近くも家を空ける。ういはほったらかしにされるが、彼の眷属と化した女たちがそれとなくあやしてくれた。
彼に侍る女と、ういが一線を画したのはその幼さもあったし、何よりも気性の激しさがあった。唯一この屋敷の中で、主の鬼に阿ることのない、小さな牙を持った獣だった。
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