お父さんとお母さんは、羅刹に殺されました。
あっという間に、真っ赤になって倒れて。私はびっくりして。
3歳の誕生日のもらったクマのぬいぐるみを痛いぐらいに抱きしめて、目の前にたったその人を見上げました。
長いあいだ、私と彼は見つめあっていました。にらみあってました。
私はまばたきするのを忘れて見上げてました。目が痛くなって涙が出てきました。カタカタ体が震えました。
でもそらさないで見てました。こわいケモノと目を合わしたら、目をそらしてはいけない。私はそれを誰に知らされず知ってました。
私は怖がりだけど、心の奥底にはいつも冷たいほどに燃え上がる真っ白な『怒り』がありました。それに寄り添った時だけ、私は何も怖くなくなってしまうのです。
ソレは激情で、暴力で、残酷でした。けれど臆病な私の中では、勇気に取って代わる強い『力』でした。
やがて、見つめあい睨み合い。根負けたのは彼でした。
だから、彼は私を抱き上げてそのまま山の小さなお屋敷に連れて行ったんです。
あまりの出来事に、私は両親のことは真っ赤な姿しか覚えてないです。
その姿だけを頭に焼き付ける代わりに、私はほとんど全ての記憶を手放してしまってました。名前も覚えていなかったから、、彼は私を「うい」と呼びました。覚えていても「うい」と呼んだ気がします。
それから、森の中で暮らしました。
私が好き勝手にするのを、彼はとても喜びました。喜んでたと思います。
私が気に入らないことをすると、必ずにらみ合いになりました。私は何があろうとそれだけには負けませんでした。一度死に掛けたこともあるけど、目をそらさなかった。
だから私は生きてます。一度でも彼に阿ったら、彼は私を飼うことに飽きたでしょう。私はなんとなくそれがわかってました。
私は自然、鬼の子になって。けれど鬼が起こすヒトへの災いからはやんわりと遠ざけられていました。
「うい」と呼ぶ声に慈しみが満ちて、なんとなく彼の望む先がわかった時。私は唐突に、ひとりになりました。生まれて初めて独りになって、それがとてもとてもこわくて。私は泣いて彼の名を呼び続けました。泣いて泣いて泣いて3日たって、泣きつくして。起き上がるのも億劫になったころ、ぼんやりと彼が自分に「飽きた」ことを実感しました。
なぁんだ、って思いました。こんなものか、と思いました。
そして、現れた武蔵野学園の人がういをここに、学園につれてきたのです
背後:なんとなく、ういの過去
こんなかんじだよとだけ
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