たとえば。朝
スミケイの後姿を見つけて、その背中に跳びかかるようにして肩をたたく。
「おはよ!」
その後、なんとなく仲良しのふりがしたい私は。手をつなごう!といってみる。スミケイはどうするかな。逃げちゃうかな。
でも仲良しさんって、手をつなぐんだよ!
まだ慣れない学校生活は(何せういは、学校いったことってない。学園に入るまで、学校の先生にいっぱい補習をしてもらった。すごいすごい努力したんだよ!これでも!)めまぐるしくて。同い年のヒト。しかもみんな何らかの力を持ったスレイヤーだっていうヒトがたくさんいる。
…ういが本気でぶん殴っても、たぶん死なない人たちがうれしい。
普通のヒトは、本気でぶん殴ったら怪我したり死んじゃったりするっぽい。
ういは、ういの中の怖い神様を、ちゃんと宥めておけない。時々ものすごくぶち壊しにしたい時がある。
でもそれが「いけないこと」なのはちゃんと知ってる。ヒトゴロシはしたくない。それは、絶対にイヤ。
あ、脱線した。
ういの…私の(さいきん自分を名前で呼ぶのはやめようと思い始めた。だって子供っぽい)周りは、賑やかで。
いまはまだ夏休みなんだけど、早く授業とか部活が始まらないかなぁって思う。
私のことを見ていた先生がそろそろ監察寮から出て一人暮らししてもいいって言ったのです。
私は先生から見たら、かなり危ない闇堕ち線ギリギリっ子だったぽくて。でもがんばったら、ずいぶん安心点になったっぽい(あぁ、ういの話し方って支離滅裂。もうちょっとちゃんと説明できるようになりたいなぁ)
…とにかく、私はどこかにおうちを借りて。お友達と暮らしたいのです。野望。
野望って言葉好き、なんだかカッコイイ。
とか、考えてると夏休みの補習が終わる。
明日からちゃんと学校なのね。たのしみ。
帰り道、吉祥に寄る。尚くんがいたから、隣に座って水筒のお茶で「お茶」をする。
私と尚くんは「茶飲み友達」なのだ。お茶を飲むのが日課なのだ。そのために、ういは夏でも熱いお茶を水筒に入れておく。
友達は大事にしたい。
初めての、友達たちだ。人間の。
「キィちゃんの五家宝がおいしいねぇ」
最近知ったお菓子は甘くて。なんだかほろほろ泣きそうになる。
泣いても尚くんは、黙ってお茶をしてる気がした。泣き止むまで、湯飲みのお茶をゆっくりゆっくり飲みながら、顔を上げるのを待っててくれる気がした。
……そんな、気がしただけで。泣かなかったけど。
そんなお茶をして後から来たキイちゃんと、他のみんなと話をして。
監察寮に帰る。
帰る前に、ヴァルに会う。暮れかけの街に一人立ってた。何してるのかなと思ったけど、聞かなかった。
ヴァルは背が高いから、顔を見上げるだけですごく大変。うんと背伸びをしなきゃいけない気がする。
そのあとヴァルは私の頭を撫でてふらり、どこかにいっちゃった。長い影をひいて街に消えてった。
どうせなら監察寮まで一緒に帰ってくれればいいのに、とかちょっと思った。でもそれはワガママで甘ったれだからやめる。
途中でお菓子がほしくなっちゃった私は、なんだか夕暮れの風が楽しくなってしまって踊るような足取りで。
前を見てなかったから、その人にどすんとぶつかった。鼻をぶつけた痛かった。
「…大丈夫?」
白いヒトは、心配そうにいった。真っ白な手が伸びて私の頭、撫でた。何でみんな私のこと撫でるのかしら。
その後、晩御飯の時間を忘れて先生に怒られた。
私、時間を守るのちょっと苦手かも。
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