半年で3センチ。正確には3,3センチ、とか正確な差を測っても悔しいだけで。
初夏の日差しが強くなって。また夏の制服に着替えた自分たちの。上がった学年でも変わらない席の隣を眺めてみる。(着ぐるみとかげだったのは目の錯覚。バベルの鎖って優秀)
これはもう、きっと追い抜くことができなくて。
どうしようもないことのひとつなんだって知る。
例えば、出会った頃。無邪気に繋いでみた手よりも。この間の戦争前、屋上まで引っ張った手の方が大きくなっていた気がしたのとかも。
そんなのをぼんやり考えた授業中。
夏に近い日差しは、キラキラ透明で。
空は遠くて。
窓辺から黒板に並ぶ文字に目をやりながら自分は何か、変わったかなぁって考えた。
世界は目まぐるしく動いてて。
人はどんどん変わっていて。
髪や爪が伸びる以外に、何か変わったことがあったかを探すけど。そんなの自分じゃわからなかった。
ふとアイスクリーム、食べたいなって思ったから。帰り際に買って帰ろうと思った。
たい焼きよりも、そういうのが美味しい季節だから。
ノートの端っこたい焼きの絵よりもソフトクリーム。ういは絵が下手ね。
* * *
お昼休み、図書室に行く。
植物図鑑を探してうろうろ。梅の名前が知りたいの。
新しい斬艦刀の鞘には紅梅白梅。何かいい、素敵な名前はないかしらって。
思い図鑑、両手で支えてページをめくる。新しいこと、知るのは好き。どんなことでも、なんだか楽しい。
紅梅白梅。
白い梅のほうが、薫り高いのだって…いつか言った事があったかしら?だからういは白梅のほうが好きなの。
白くて、香りのよいお花が好き。
ページをめくる。紅梅、白梅。
手を止めて、その奇妙な。美しい樹を見る。
名前は―――『思いの儘』
ひとつの枝に、白も赤も思いの儘に咲かせる梅の品種。
「ん、これにしよう」
思いのまま振り回し、思いのままに振り下ろす。
ういの武器。
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