―――とん。
一瞬の攻防の後、彼女は軽やかに半歩を飛びずさり、右手に持っていた斬艦刀を左手に持ち替える。瞬間、右腕に闇が凝った。
空手となった右腕にまとわりついた闇は、赤黒く渦巻きぼこぼこと巨大な異形の腕と化す。
それは幼げな外見を持つ少女には不似合いの醜い鬼の腕だった。
「あっはははははは!」
そして少女は暁に似た透明度の高い薄紅の瞳をキラキラと輝かせ、重たげな腕を軽々と振りかぶり、地面に向かって振り下ろす。反動で繊細な身体が跳ねる。肩口につくほどの栗色の髪が揺れて、笑顔を縁取る。
……純粋な力。
強固な意志も、細かな駆け引きの技も。何もかも、まとめて粉砕する絶対の暴力。
ぞっとするような音を立て、それが地面を深くえぐった。