その娘は生まれて同じ頃に、生まれた羅刹の娘も目を覚ました。
ひとつの体の中で、お互いを認識しているような。認識していないような。同じもののような、そうでないような。
曖昧なままで、彼女たちはころころと境界線を危うく行ったり来たりした。
それは、娘が灼滅者だったから。すぐに闇に飲み込まれずに、いたのかもしれない。
そして、とても。些細な出来事で。些細な言葉で。
羅刹の娘か、灼滅者の娘か。
どちらか曖昧なまま、巨大な鬼の腕を持って。
その子は両親を殺した。
重なり合って死んだ両親の血で、真っ赤になった部屋の。その赤さだけ。その光景だけを決して忘れないように焼き付ける代わりに。そのほかの全てを手放したのが、人の娘。
「あきつ」という名の羅刹は。
ごく偶然、同族の気配をたどってそこに来た。真っ赤な部屋にペタンと座った、人とも羅刹ともつかぬ曖昧な子供がそこにいた。
彼は、若い男の姿をしているくせに、ふとした瞬間にはとても疲れ老いたように見える不思議な外見をしていた。
それは、外見ではなく彼の魂が既に生き飽いて、老いつつある証拠。
彼は、憎まれることも面白いと。罪を曖昧にしたまま、娘をその場から抱えて去った。
そして、深い雪がすべてを閉ざす北の大地で。「娘たち」を境界線の曖昧なままに育てた。
呼び名は「うい」
愛い、憂い子供たち。
彼女たちがひとつの体の中で、せめぎ合って育っていくのが興味深かった。その魂同士が散らす火花が、眩く。それを見ている限りは、「生きているのも悪くない」と思えるようだった。
けれど、刻限は残酷で。
最後の夜に、彼は娘たちを呼んで尋ねたのだ。
もはや自分には、わからなくなってしまった問を。
「なぜ、生きる?」
あとは、皆の知るとおり。
「答えを求めろ、娘たち」
最初の問いにまず答えたのは人の娘だったから。
それを証明させるために、男はまず「羅刹の娘」の魂を眠らせた。
そして………。
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